2009年04月22日

地域再生へ知恵結集を

  いま、役割を問う  地域再生へ知恵結集を 
            慶応大学 金子勝氏/09.04.07河北新報

 少子高齢化の進展と景気後退による自治他の財政悪化を背景に、地方議会の存在意義を問う声が強まっている。財政運営の監視や、政策の優先順位の決定で、議会がどんな役割を果たしているのか、はっきり見えてこないのが最大の理由だ。平成の大合併に伴い、「地元」の議員が激減した影響も大きい。危機感から、住民との距離を縮めようと模索する議会が増えているが、目を向け直す住民はまだ少ない。「民主主義の学校」と呼ばれる地方議会が、本来の機能を発揮するためには何が必要なのか、四人の識者に聞いた。(聞き手は編集委員・渡辺雅昭)

  一世界的な金融危機で、急激に景気が後退しています。特に地方の打撃が深刻です。現状をどう見ていますか。

  生活基盤の崩壊
  「戦後最悪の不況が迫る中、医療、介護、雇用をばじめ本当に切羽詰まった生活の課題が浮かんでいる。住民の生活を守り、地域を再生することに集中しないと大変なことになる」
  「小泉純一郎内閣の構造改革がもたらした疲弊は、所得格差の拡大だけではない二雇用や医療など、地域が持続していく、人が生きていく基盤そのものの崩壊が始まっている。国の政策転換が必要だが、どう立て直すか、地域で真剣に議論しなければならない状況にある」

  -何とかしなければという真剣な議論は地方ではまだ少ないようです。

  「行政も議会も、国からお金がばらまかれるのを待っている。地域を再生しよう、資源を生かして業を起こそうという動きを盛り上げなければならないのに、そうした動きとうまく結びついていない。住民が生きていくための基盤だけでなく、地域を立て直すための回路も崩壊の危機にある」

  -地方議会が十分に役割を果たせない理由をどう考えていますか。

  機能しない装置
  「議員は地域、業界の利益代表であることが多く、議会は利益配分の装置として機能してきた。二〇〇〇年代に入り、公共事業ができない、住民サービスはカット、産業振興も工場誘致くらいしかなく、農業補助も減る中で結局、時代に合わなくなった。歳出が削減されるのに利益代表だけいても議会は機能しない」
  「地域再生のために、議会にはどんな代表が選ばれるべきで、どんな機能を果たすべきかの議論がないまま、市町村合併で議会も歳出削減の対象となってしまった」

  -地域を崩壊させないため、どのような対応策が考えられますか。

  「住民の生活を守る医療、介護は地域で取り組める。医師を養成して不足を解消するには最低でも八年かかる。そんなに待てないと、開業医、看護師、保健師などを含めたネットワークを組んで有効な地域医療システムをつくり出そうという動きが各地で起きている。」
  「食料、環境エネルギーなどは地域単位で考えていかなければならない。安全な農産物の直売だけでなく、いろんなところで一級品が生まれている。特産の野菜と牛肉のせいろ蒸しの店を銀座に出店した農協や、生クリームたっぷりの唐芋ケーキで百人の雇用を生み出した産地もある。時代の流れを読み、その先頭に立つ地域が生き残っていける」

 -地方議会の活性化には何が必要でしょうか。

 広く門戸を開け
  「日本の会社文化は議員の兼職を否定しているが、ヨーロッパでは議員に教員や商店主も兼職が可能だ。日本でもボランティアなら兼職は問われないのだから、議員の給料を大幅に下げ、夜間議会を開くなどの工夫で、議会を活性化させることばできる」
  「地方議会に必要なのは開放性。ちゃんとしたことをやっている人、アイデアのある人を議会に押し上げていかないと閉鎖性は打ち破れない。各分野で地域をつくろうとしている人たちが議論をして、役所、住民を動かしていく。そういう風に回転していかないと、地域が底割れしていく。理想論かもしれないが、地域の危機はそういうところまできている」



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